短期記憶と長期記憶の違い 暗記能率を上げる記憶に関する心理学

暗記

英単語、古文単語、歴史用語などの基礎的な語句、語彙力を暗記で鍛えることは普段の勉強でも、受験勉強でも大切です。

しかし、暗記作業は基本的に地味であり、また勉強して数時間は覚えていたとしても、数日もすれば忘れてしまう…という失敗をしたひとも少なくありません。

心理学では、そんな暗記の効率を上げるための記憶の方法や、記憶の種類、仕組みに関する研究は盛んで、その中でも今回は「短期記憶」と「長期記憶」の2つの記憶のメカニズムに関してまとめました。

短期記憶と長期記憶の特徴を知って暗記勉強に生かすことで、より効率的に暗記しやすくなったり、勉強した事をすぐに思い出せる記憶力を身に付けることが可能になります。

 

 

認知心理学では記憶は箱(ボックス)で考える

記憶や学習に関する認知心理学では、人間の記憶のメカニズムを箱(ボックス)という概念で考え、その箱の性質から短期記憶と長期記憶の2つに分けました。

なお、箱で考えることからボックスモデル、あるいは貯蔵庫モデルとも呼ばれています。

財布や貯金箱や金庫に預けたお金が、必要なときにはそこから適宜引き出される‥という仕組みが、人間の記憶でも同様に起きているというイメージを持てばわかりやすいと思います。

 

短期記憶

短期記憶とは、人間の感覚器官(目、耳、手、口など)を通して感じる情報を一時的に保存される記憶のことです。

その名のとおり、記憶として残る時間は短く、また覚えておける情報の量も少ないという特長があります。

短期記憶に保存した知識は、短時間のうちに復習などで繰り返して勉強しないと、せっかく覚えた内容はすぐに忘れてしまい無駄になってしまいます。

しかし、何度も復習したり、しっかり単語の意味や覚えた内容に関連する情報とを一緒に記憶しておくことで、短期記憶に保存された情報は長期記憶へと移って、長期間の保存が可能になります。

 

長期記憶

長期記憶はその名の通り、長期間にわたって保存される情報のことで、その容量は短期記憶と比較すると大容量で、数年経っても覚えた情報が必要なときに思い出して使用できるという特長があります。

暗記で知識を詰め込む時は、短期記憶で覚えた知識を何度の繰り返すことで長期記憶に移し、試験やテストである問題を見たら、その問題を解くのに必要な公式、用語、解き方などをパッと思い出せるようになるまで訓練することが大事と言えます。

ちなみに長期記憶は受験で使う科目の単語、用語といった物もあれば、自転車の乗り方や逆上がりのやり方といった、言葉でうまく表現しにくい体の動かしかたなどの知識も含まれています。

記憶と一口に言っても、その内容は決して記憶は頭で覚えるものに限らず、体を使って全身で覚えるものだということも知識として知っておくと理解が深まります。

 

 

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「短期記憶→長期記憶」になる暗記の方法

暗記で覚えた記憶はまず短期記憶に、そして繰り返すことで長期記憶になり、試験やテストで発揮されるというのが、暗記の基本です。

しかし、ただ何も考えずに何度も繰り返すだけでは短期記憶から長期記憶に移行しにくく、また途中でモチベーションを失ったり作業感が強くなり苦痛やストレスを感じる原因になります。

そこで、どうしたら「短期記憶→長期記憶」へとスムーズに移行しやすいのかという方法について、説明していきます。

 

覚える内容の意味、関連知識、背景も一緒にして覚える

例えば、英単語を記憶する場合、その単語を単品の情報だけではなく、その単語の意味や関連知識、単語にまつわる背景や時事ネタなども交えて一緒に記憶することで、より記憶が強固なものになります。

 

例えば英語で記憶を意味する「memory」という単語を覚えるにしても…

  • memoryに関する類義語、同義語も一緒に覚える。
  • memoryの発音の仕方や、発音記号、アクセントも一緒に覚える。
  • memoryという単語が使われている英文、長文も一緒に覚える。 (→例文暗記)
  • memoryの単語が持つ意味を複数覚えておく (例:記憶、思い出、記念など)
  • 日本語として「メモリ(orメモリー)」が使われているものについても調べる。 (例:パソコンの「メモリ」、SD「メモリー」カード、「メモリ」アルコンサートなど)

と、単語に関するあらゆる情報も一緒に調べておき、まとめて暗記しておくことが大切です。

 

なお、この場合単語一つに対して暗記にかける時間が増えてしまうので非効率的になるのではないか、という疑問もあろうかと思います。

ですが、かける時間が増える分、より記憶が印象強いものになり、また関連する他の知識もおまけとして覚えることができるので、長い目で見れば無駄や漏れの少ない暗記方法となります。

 

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マンガやゲームなどでエピソードのある記憶として覚える

とくに歴史系科目は、自分が実際にその時代に生きていて、起きた出来事を肌身で経験しているわけではないので、用語や人物名を覚えても親近感がわかず覚えづらいということもあろうかと思います。

その場合は、「マンガでわかる○○の歴史」シリーズのように、絵や図解で詳しくそして印象に残りやすい演出がほどこされた教材を使って学習するのも、記憶に残りやすい暗記方法の一つです。

また、歴史に関するゲーム…例えば第二次世界大戦期に登場した艦船やそれにまつわる歴史をモチーフにした艦これやアズールレーンのように、ゲームで歴史に触れてみることも、より長期記憶として残りやすい勉強方法とも言えます。

 

…なお、ゲームや漫画に限らず、実際に歴史の教科書で登場した街や史跡を訪れて見ることも、自分の思い出(エピソード)として暗記した内容を長期記憶へと残りやすくする方法と言えます。

京都や東京などの日本史でよく登場する場所に住んでいたり、歴史的な観光地として有名な場所に住んでいれば、手軽に観光がてらに訪れることができて勉強と遊びをどちらも楽しむことができますね。

他にも修学旅行や社会科見学などで実際に教科書に登場した場所を訪れて見るのは、より自分の思い出として

 

日常生活で見かけるものと結びつけて覚える

勉強で覚えた知識はテストや受験の時しか登場しない…という考え方では、せっかく覚えた知識が日常生活でみるものにも生かされているということに気がつかないままになります。

例えば、平安時代に建てられた京都の宇治川の近くにある平等院鳳凰堂。これをただの日本師に登場するだけの知識として覚えてしまうのではなく「10円玉に登場するお寺」という知識と一緒に覚えておくことで、長期記憶として残りやすくなります。

10円玉なら学生であっても普段の生活でよく使ったり、触ったりしていることで、なんとなくデザインや描かれているものが何なのか…という知識もあることでしょう。

そういった日常生活で見かけるものと受験勉強で覚える知識とを、全く関連ないではなくどこかでつ繋がっているものだとして関連付けて覚えるのが、記憶力を鍛えるコツです。

 

教科書や参考書以外の世界にも目を向けてみるのが暗記のコツ

「受験やテストのため暗記だと、どうしても教科書や参考書の中に載っている知識のみ頭に叩き込めばちゃんと覚えられるし効率的だ」という考え方になる人は多いですし、確かに教科書や参考書をみっちりやれば成績をアップにつながるのは事実です。

しかし、その考えで覚えた知識は受験やテストが終わればそのまま二度と使われることなく、気が付けば忘れて思い出せなくなることがあり。

そして、その勉強方法が行くつく先は

  • 「受験のための勉強はやっぱり無駄だった」
  • 「受験で勉強した事は実社会では役に立たない」

という考えのように感じます。

受験やテストと聞くと、どうしても実社会とは全く無縁で、問題用紙の上で繰り広げられるごく狭い世界の出来事だと思われがちですが、実際は実社会と深く関わりがあったり、自分の想像していないところで関連のある知識として使われている…なんてこともあるものです。

こうして書くと遠回りのように思えますが、教科書や参考書以外の世界にも目を向けてみることが、暗記をする上では欠かせないことだと感じます。

 

参考文献

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written by
勉強の知恵袋 編集部

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