中学受験は多くの子供にとっては初めての本格的な受験であるために、負担が大きく不安から受験勉強に集中できなくなったり、恐怖から精神的に参ってしまうことがあります。
この状態は「受験うつ」と言われており、中学受験を受ける子供なら誰もがなりえるうつ状態の1種です。
まだまだ受験うつの認知度は低く「甘え」や「気のせい」という言葉で片付けられてしまったり、症状が悪化してしまったり、知らないうちに更に子供を追い込んでしまうという事例が後を絶えません。
中学受験における受験うつ
小学生の頃だと社会について詳しく想像できないことや、学歴や受験が自分にとってどのような未来や利益をもたらしてくれるのかについてよくわかっていないこともあり、受験勉強そのものに対して漠然とした不安を抱くことで受験うつを引き起こすことも考えられます。
しかし中学受験における受験うつは、受験を受ける子供1人に原因があるのではなく、子供を支える親や塾の先生などの周囲の大人もうつを招く原因のひとつとして考えられています。
受験うつは次第に勉強に対してやる気をなくすだけでなく、日常生活全般において気力を失いそのまま受験を諦めたり、不登校になるケースもあります。
大人のうつ病と違って子供のうつ病の場合はふさぎ込むのではなく、情緒不安定になって急に泣き出したり、やたらと甘えてくる、年不相応にベタベタとくっついてくるなどの行動面の変化に症状が出やすいと言う特徴があります。
また、感情の変化以外にも
- 円形脱毛症
- 爪を噛む
- 食べすぎor食欲不振
などの症状や行動として、受験うつ病が現れることがあります。
また、仮に無事合格出来たとしても、当時の辛い経験が記憶に残ってしまった結果、高校受験や大学受験で受験うつを再発してしまったり、中学生活に対してやる気を見いだせなくなり中だるみや不登校になってしまうこともあります。
受験うつは中学受験の時期だけの問題ではなく、その後の学生生活、ひいては社会人生活にも影響を及ぼす可能性があるのです。
スポンサーリンク
中学受験は親の期待で子供を受験うつにさせやすい
中学受験は、高校・大学受験とは異なり受験勉強に対して親が強く関わる傾向があります。
例えば、普段から塾の進み具合や模試の結果を親子で一緒に確認したり、志望校選びに対して親の意見が強く反映されて子供がそのまま親の期待に沿うように受け入れてしまう、と言うケースが中学受験には見られます。
中学受験は反抗期よりも前の自我が芽生えない子供を対象に行うためか、よく言えば親の頑張りが子供を動かす、悪く言えば親の期待で子供をコントロールすることになってしまうのです。
中学受験の会場に保護者用のスペースが当たり前のように置かれているように、中学受験は親子が一丸となって取り組むという意識はごくごく一般的なものと言えます。
また、子育てに手がかからず、物分かりの良い子の場合は
- 「勉強すれば親が喜んでくれる」
- 「受験で志望校に合格すればお母さん(あるいはお父さん)が喜んでくれる」
と親の期待に応えることに必死になりすぎて、自分の気持ちを後回してしまう傾向があります。
自分のしたいことや感情を必死に抑圧して、つらいのを我慢して無理をしてまで勉強に打ち込無事で負担が大きくなり、体調面や感情面に支障が出て初めて受験うつに気が付くという例が目立ちます。
もちろん、我が子の受験に対して応援やサポートの意味で期待をかける事は誰にでもあるでしょう。
しかし、子供がその意図を汲み取れずにただ「絶対に合格しなさいと」という重圧をかけられたと感じたり、「これだけ期待しているのだから受験に失敗すれば、親は自分のことを嫌いになって見捨てるかもしれない」と言う恐怖心を感じて、精神的に参ってしまうこともあります。
また、「勉強をすれば褒められる」という考えは言い換えれば、
- 「勉強しなければ褒めない」
- 「勉強しないあなたには愛するだけの価値は無い」
という極端な考えにつながりやすく、自分のための受験ではなく、なんとしてでも親から愛されるために受験勉強に打ち込んでしまう子供を生んでしまうこともあります。
スポンサーリンク
受験うつにならないための対策
適度な距離感を心がける
自分の子供を受験うつにさせないためには、親子の距離感の保ち方が大事です。
距離感が近づきすぎたせいで、いつも勉強していないか気になって見張ってしまうとか、自分の期待を一方的に子供に押し付けて子供の精神的な逃げ場所を防ぐような距離感では、子供は強い負担を感じてしまいます。
受験と言う100%合格する保証はない不確かなものに対し親が不安になりすぎて、その不安を払拭するためにお互いにべったりくっつくような距離感で接してしまう事は、中学受験なら誰でも起こることだと思います。
ですが、近づきすぎて子供を束縛したり、自分の分身のように扱ってしまっては、子供に一方的な負担をかけ精神的につぶしてしまう原因になります。
勉強ができなくても見捨てようとしない
子供に対して期待をかけていればいるほど、受験勉強の結果が振るわなかった時に、自分のかけた労力に見合った成果が出ず「裏切られた」「せっかくかけた教育費が無駄になった」という素直な気持ちを抱くことがあるでしょう。
あまりの出来の悪さに、ついカッとなって勉強ができない我が子のことを嫌いになったり、「見捨てて楽になりたい」と言う気持ちになるのも無理は無いかと思います。
ですが、そのようながっかりした態度見せると、子供からすれば「自分は親をがっかりさせてしまうようなできの悪い子供だ」と考え、自分で自分を追い詰めてしまう原因になります。
勉強ができない時ほど、自分のがっかりした気持ちを抑えて、子供に必要以上のプレッシャーを与えないように心がけましょう。
「勉強の調子は大丈夫?」としつこく聞かない
中学受験は子供だけでなく親も不安でいっぱいになり、つい子供に対して「勉強の調子は大丈夫?」と何度も聞いてしまうことがあろうかと思います。
しかし、子供に対して「大丈夫?」聞くのは、子供からすれば親自身が不安を抱いていると言うことを感じ取ってしまい「親のためにも頑張らなきゃいけない」とプレッシャーを感じてしまう原因になります。
また、「大丈夫?」と言う言葉は、一見すると子供の心配をしているように思いますが、具体的な勉強方法を提案したり、精神的な負担を和らげるアドバイスが含まれていない言葉で、ただ不安を増やすばかりになってしまうのであまり前向きな言葉かけとは言えません。
ただ自分の不安を紛らわすためだけの声かけになるのではなく、リラックスできるような声かけ(例えば「そろそろ休憩したらいいんじゃないの」)と言うような、建設的な声かけをするようにしましょう。
子供の話をよく聞いて会話をする
受験鬱を防ぐためには、子供の話をよく聞いて会話をすることが大事です。話の内容は、受験勉強に関係のない話でも構いません。
ただ、親が一方的に喋るのではなく、子供の話をしっかり聞く態度を持ち、子供自身が子供自身の言葉で話せるような環境家で作っていくことが大事です。
受験うつになる要因として挙げられるのが、自分の抱えている悩みやを誰にも話さず子供がひとりで抱え込んでしまうことです。
抱え込むのを防ぐめには子供自身が気軽に話せる環境を、まずは家庭から作っていくことが大事なのです。
途中で受験を諦めることも視野に入れておく
中学受験を行うためには心身の健康が欠かせません。
最終手段としては、中学受験を途中で諦めて普通の公立校に進学することも受験うつを防ぐためには有効な手段です。
もちろん、中学受験を諦めた代わりに、高校や大学受験でまた頑張ることができれば、その後のその後の進路や自分の将来を大きく変えることができるので、短期的な視野ではなく長期的な視野で子供の人生を支えていく姿勢を持つようにしましょう。