公立中高一貫校に進学するメリットとデメリット

中学受験

1990~2000年代はいわゆる中学受験は私立を受けるのが一般、それも中高一貫校にはいって高校受験無しでそのまま進学できる進路が人気を集めていました。

しかし、2010年前後から公立校の魅力や私立に負けないような設備、学習環境を整えた公立の中高一貫校の進学実績や学校情報が充実し、中学受験の選択肢として選ぶ人が多くなっています。

文科省の統計によれば、2000年(平成12年)には合計で17校しかなかった中高一貫校は、2013年(平成25年)では合計450校にまで増加。

学校数の増加は、それだけ世間からのニーズ…例えば

  • 学費の安さ
  • 学習環境・設備の良さ
  • 高校受験を受けなくても進学できること
  • 6年間で計画された独自のカリキュラム(授業計画)
  • 中高連携した学校行事、部活動

などがあることを、反映しているとも見て取れます。

今回は、そんな公立の中高一貫校に進学するメリット・デメリットについてまとめました。

 

 

公立中高一貫校のメリット

私立中高一貫校と比較して学費が安い

公立中高一貫校の特色は学費の安さにあります。

以前は中高一貫校といえば私立(それも私大の付属校)の方が人気がありましたが、私学の場合、授業料の他にも入学金が必要な学校が多く、仮に合格できたとしても家計を逼迫し別の問題が出てきかねません。とくにリストラなどで収入が途絶えた時に、私立の学費の重さがのしかかるリスクもあるので、誰でも簡単に通えないのも事実です。

東京都を例に出すと、授業料の平均は約45万円、入学金は25万円で、教育費の高さが受験の歳の悩みの種となっていました。

 

しかし、公立校の場合は中学3年間は義務教育なので無償、高校3年間は2014年(平成26年)から高校無償化により授業料は無料となっています。

基本的に教育費として出すのは給食費、修学旅行などの学校行事費、制服代、PTA会費などに限られており手頃なものとなっています。

 

中高連携した授業、部活動、学校行事が行われている

中学と高校の校舎が隣接している、あるいは同じ敷地内に存在している中高一貫校の場合、中学生と高校生とが連携した、授業、部活動、学校行事(体育祭・文化祭など)を行い、学校生活で得られる学びや経験が魅力的です。

とくに、学校生活の大きなウェイトを占める部活動で、中学生のうちから高校性レベルの練習や技術に触れられることから、競技力や技術の向上が期待できます。

また、入学したての中学生からすれば、高校生は立派な大人のように見えることから、将来なりたい理想の高校生(大人)像を中学生のうちから考え、自分の進路や生き方について考える経験を積むこともできます。

 

大学受験を据えたカリキュラムを実施している学校もある

公立中高一貫校には、例えば東京都立白鴎高校および附属中学校のように「塾や予備校に通わずとも東大に進学できる」という教育方針で、学校運営をしている学校もあります。

中学から高校までの6年間という長い時間を使って、勉強のできる層、できない層ともに学力を身に付け自分の志望大学に合格できるよう丁寧に指導するなど、幅広い学力をもつ生徒の大学受験に対応したカリキュラムを用意している学校もあります。

また、学校によっては中学3年生の内に高校1年生で行う勉強を先取りして指導、高校3年生の頃には大学受験(国公立・私学の一般入試、AO、推薦)をじっくり行えるスケジュールを組んでいる学校もあります。

 

学校の設備が新しく、充実している

新設された公立中高一貫校の場合、公立とは名ばかりで私立同様の学校設備が整っている学校もあります。

一例としては

  • 各教室だけでなく自習室などにも冷暖房が完備。
  • 図書館の蔵書が豊富で最新の図書が揃っている。
  • 運動場、体育館、プール、トレーニングルームなど部活で使う設備が充実している。
  • (理系科目の場合)実験機材や資料などが豊富である。

などがあります。

これらの設備が格安の学費で利用できるとあって、公立中高一貫を志望する人は多く、学校によっては私立以上の高倍率になることもあります。

 

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公立中高一貫校のデメリット

倍率が高い

学費が安く、6年間を使って丁寧な指導をしてくれうなどのメリットの多さゆえに、公立中高一貫校は倍率が高くなる傾向があります。

さきほど触れた東京都立白鴎高校・附属中学校は2018年度では募集134人のところ、応募が958人で倍率は7.14倍となっています。

また、過去のデータを見ても、募集人員は130~150人程度で推移しているなか、倍率は平均で6~8倍程度と高い水準で推移。とくに附属中学校が出来た2005年に至っては、倍率14.26倍という結果でした。

また、倍率の高さは少子化が深刻な地方の中高一貫校でも同様で、3~6倍程度の高水準で推移しています。

 

勉強に対する中だるみのリスク

高校受験を経ず進学できる公立中高一貫校の場合だと6年間のだいたい真ん中の時期である、中3~高1の時期に、勉強含む学校生活全般に対してモチベーションが下がってしまうことがあります。

この現象は「中だるみ」と呼ばれており、高校受験という外部からの刺激がないために、嫌でも勉強をする機会なく高校に進むことで起きるものとされています。

もちろん、中だるみは一貫制ではない普通の中学でも発生しますが、高校受験が本格的になる中学3年生になると、嫌でも中だるみは解消され長引かずに済みます。

しかし、中高一貫校の場合、高校受験なく進学可能であり、中だるみの状態を引きずりやすく学力や学校生活の遅れをを招きやすいと言えます。

中だるみは中高一貫校ではよくあることだけに、学校側が中だるみを防ぐためにしている対策(進路指導、学外活動、補修など)を調べておくことが大切です。

 

中高で人間関係がリセットされないまま進学する

中高一貫校という性質上、中学からの人間関係がリセットされないままなので、高校デビューの機会がほぼ無いという特徴があります。

進学しても何度も顔を合わせている友達、先輩と高校生活を送れるのはメリットでもありますが、「学校の雰囲気があわない」「友達とうまくいかない」という問題が高校進学によって解消されず、そのまま引き継がれてしまいます。

高校で新しい環境に飛び込むことで、今までの自分では想像できないような学業や部活で結果を出せることもありますが、中高一貫校の場合、中学でくすぶっていると高校でもくすぶり続けてしまい、最悪の場合不登校や退学になることもあります。

 

歴史が浅い学校だと他校との比較が難しい

基本的には「公立」中高一貫校なので、堂々と大学受験一辺倒なカリキュラムにすると、「公立なのに学力格差を肯定するのか」などの世間からの反感も想定できるものです。

そのため学校を選ぶ場合は進学実績よりもカリキュラムや学校活動も踏まえて判断するのが大事と言えますが、かと言ってせっかく6年間通わせるのだからmできるだけ大学受験につなげたい思うのも人情と言えます。

となれば、「公立」中高一貫校と言っても進学実績をもとに学校を比較、判断することは欠かせません。

しかし公立中高一貫校の場合、学校によっては歴史が設立から浅く、中高一貫校化を始めてからの進学実績が出ていない、あるいは他校と比較すると情報が不十分で比較しづらいこともあります。

大学への進学実績や卒業生の活動などの情報が不十分なうちは、公立中高一貫校というブランドだけを見ず、慎重に判断することも大事と言えます。

 

 


参考書籍